【関西の教育最前線(1)】関西難関8私大の難易度に変化


入試情報室長 藤山正彦
(開成教育グループ)

 2014年度、私立大の入学者数は入学定員を全国で約4万5千人超過。うち8割が三大都市圏の私立大に集中していた。

 この状態は当時の安倍内閣が進める地方創生に相反することもあり、文部科学省は16年度から、入学定員を超過した私立大に対し、定員管理を厳格に行うと発表した。新入生数が一定基準を超えた大学には補助金を交付しない、学部新設も認可しないという内容で、大規模大学には最も厳しい基準が設けられ、関関同立なども大きな影響を受けた。

 また、文科省は「大学入試センター試験」を大幅に見直し、21年度から「大学入学共通テスト」を導入。その前年度、つまり旧制度最後の年の受験生は、安全志向から浪人を回避する動きが目立ち、国公立大受験者層が私立大へ流入。先に述べた入学定員の厳格化と相まって、関西難関私大の20年度入試は最も狭き門となった。

 このため、共通テスト元年の21年度入試は、前年度から既卒の受験者が全国で2万人以上減少。しかもコロナ禍で2月の私立大入試を受けられるかどうかの不安から、指定校推薦など推薦系の入試に流れ、2月の受験者数が大きく減少した。同様の動きは22年度入試でも起こった上、定員厳格化が一段落したため、全体の難易度は15年以前に戻った印象だ。

 10、20、22年度の河合塾の基準偏差値をいくつかの専門分野別にグラフ化してみた。

 まず、法学部系統=表①

 ご覧のように20年度がピークとなったグラフになる。10年の開き具合と比べて20年は差が小さくなった。つまり法学部系統は、下位に位置する大学ほど大きく難化したことがわかる。受験者の地理的な広がりが大きい立命館はコロナ禍の影響で他府県からの受験者を大きく減らしたことも響き、今年は関大と関学と同じ難易度になった。

 一方で立命館は15年、茨木市に「大阪いばらきキャンパス(OIC)」を開設して経営学部と政策科学部を、16年には総合心理学部を開設するなど大きな動きがあった。その影響にも着目しながら経営・商学系統を見てみよう=表②。

 10年から20年の間に大阪に進出したことで立命館が大きく伸ばしたが、同志社には影響が無く、関学と関大が下がっている。しかし22年度には受験者減少の影響で、立命館が10年の水準以下に下がり、国公立の併願として認知される同志社大のみ高め安定となった。

 心理学系統は戦国時代=表③。専門分野が無いわけではないが、募集単位として心理学が独立していない京産大と甲南は除いている。

 立命館が文学部の心理学域から「心理学部」として独立し、茨木市に設置した影響で、お隣の吹田市にある関大社会学部の心理学に影響が出るといわれたが、実際には関学の総合心理が一番大きく下がることになった。

 最後に生命科学、農学系統の推移を見てみよう=表④。

 同志社、関学、関大、立命館はほぼ同じ動きだ。ただし、この専門分野の特徴だが、コロナ禍で看護系、創薬系といった実学系へのシフトもあり、結果的に甲南のフロンティアサイエンス、京産大の生命科学が大きく難易度を下げた。

 最後に、当グループからダブル合格をした受験生はどちらを選んだのか、についても調べてみた(20~22年度入試の3年間合算)。

 関西のどの私立大とダブル合格しても、ほとんどの受験生が選ぶのは「同志社」。次に「関学」「立命館」「関大」。その後に、「近大」「甲南」「龍谷」「京産大」と続く。それぞれの大学の研究内容や就職状況などから受験校を判断することで、実際には基準偏差値よりもはるかに高い受験生が受験し、入学することも多いので、そこに在籍している学生の優劣を表しているものでは決してないが、ダブル合格をした受験生がどちらを選んだのかというのは一つのブランド力を表したものといえる。

※グラフのデータは河合塾「栄冠を目指してVol.1」より