【外から見たニッポン】国民皆保険制度は維持出来る!?

Spyce Media LLC 代表 岡野 健将

Spyce Media LLC 代表 岡野健将氏

 先日、アメリカで約1500万人が低所得者向け医療費補助精度の適応から外されるかもしれない、というニュースが流れました。元々アメリカには日本の様な公的保険制度がなく、各自が民間保険に加入するか無保険でいるかのどちらかでしたが、2014年から施行された保険制度によって、多くの無保険者だった低所得者も保険に加入出来るようになった。

 私もアメリカ滞在中は、学生だった時期を除いてずっと無保険状態でした。雇用されていた際は、会社から提供された保険は月額$250の掛け金を払っても、医療費が2000㌦までは自己負担だったため、年間の医療費が5000㌦までは自己負担と同じと考え、当時は若くて健康だったこともあり、未加入を選択。ちなみにこの保険には目と歯の治療は含まれず、処方箋も別。利用出来る医療機関も提携先のみでした。

 会社が加入する団体保険ですらこの内容なので、独立してからは個人で保険に入ろうなんてとても思えませんでした。

 その結果どうなるかというと、体調の変化に敏感になり、健康に気を使う様になります。病気になれない、病院へ行けない、と思うと普段の生活スタイルや食べる物、健康維持などに気を使う様になり、自己免疫力を高める努力をします。予防医学というものです。

 お陰でアメリカ在住中に体調不良や怪我などで病院へ行く事は一度もなく、成人してからこの方、寝込む様な風邪をひいた事もありません。

 アメリカでは風邪で注射1本打つだけで100㌦とか200㌦しますし、盲腸で入院して手術すると100万円コースです。そして日本と違い、高額費用がかかる医療行為を受けると全額自己負担ですから、保険に加入していないととても対応出来ません。救急車も呼べば500~1000㌦くらい請求されたり、出産翌日に退院しても数十万円は請求されます。

 病院によっては、無保険者は窓口で受け付けてすらくれない事もしばしば。

 それと比べると日本の国民皆保険制度の何と素晴らしい事。国民全員がカバーされ、医療行為はどの病院でも等しく受けられ、費用負担も一部のみ。処方箋もカバーされ、薬は貰い放題。高額治療費は最高限度額以上払う必要なし。どれだけ保険を活用しても掛け金が上がる事もなし。救急車も無料。出産すれば逆にお金が貰える。もう至れり尽くせりです。

 しかし、この保険制度は、経済が右肩上がりで、人口が増加して行く事が前提で制度設計されたものなので、今のままだと必ずどこかで歪みが発生し機能しなくなる日が来るはずです。そうならないためには、各自がこの保険制度をむやみに使わずに、普段から健康に気をつけて、病気にならないために少しだけ努力して、安易に医療機関を頼らない習慣をつける必要があります。私自身、そういう生活を長くやっていたので皆さんもそんなに苦労する事なく出来ると思います。折角素晴らしい制度があるので、それをいつまでも使い続けられる様に、皆で守っていきましょう。