前号(6月25日)で「働く世代が知っておきたい年金の新常識」を掲載したところ、読者から多数の反響が寄せられた。「目先の収入にとらわれ、将来の年金額のことなんて考えたこともなかった」「手取りが減っても厚生年金に加入した方がよいと感じた」など関心の高さがうかがえた。
一方、「払っても本当にもらえるの?」と年金制度への不信感も強い。確かに年金は分かりづらいが、単純には死亡保険と逆のパターン。「みんなで払い、亡くなるともらえる」のが死亡保険で、「みんなで払って、長生きするともらえる」のが年金。100歳まで長生きして、払った2倍の年金をもらう人がいれば、早世して払い損になる人もいる。それらを踏まえた確率論や統計学を駆使して計算されているから年金が破綻する確率は低い。
歳を取ったとき、もし十分な蓄えができなかったら? そう考えると、死ぬまでもらえる年金は心強い安定した収入源だ。
今号では、読者が気になっている将来自分がもらえる年金額について調べてみた。
20代から始まる老後リスク
年金額の決め手は「年収」「加入期間」
最低10年の払い込み
誰もが気になるのが、自分が将来もらえる年金額だ。
日本の公的年金制度は2階建てになっていて、1階部分の「国民年金」と、それに上乗せされるカタチで2階部分の「厚生年金」で成り立っている。
まずは1階の国民年金。これは20~60歳まですべての人が加入して保険料を支払い、原則65歳以降に年金を受け取ることができる。ただし、払い込み期間の合計が10年(120カ月)以上というのが条件だ。
国民年金は一定額
保険料は、毎年度見直しが行われ、2021年度は月額1万6610円、22年度は同1万6590円だ。
年金額は保険料を納めた月数に比例し、20~60歳までの40年(480カ月)すべて払っていれば、満額を受け取れる。
表①は18年度の数値で申し訳ないが、受給額はざっくりこんな感じだ。
ちなみに21年度の国民年金の満額は年78万900円(月額6万5075円)。仮に30年しか支払っていなければ4分の3の年58万5675円(同4万8806円)、20年だと半分の年39万450円(同3万2537円)。
厚生年金、報酬額で差
お次は2階部分の厚生年金について説明しよう。もらえる年金額だが、こちらは年収で差が付く。保険料は毎月の給与と賞与に保険料率18・3%を掛けて計算され、その保険料には国民年金の保険料も含まれた状態で、会社と本人とで折半する。つまり、給与明細の厚生年金の欄に書かれた額と同じ額を、別に会社が負担してくれているということだ。
国民年金と違い、年収が多い人ほど支払う保険料は高くなるが、会社が半分負担してくれる上に、将来もらえる年金額も多くなる。
年収と加入年数別に見た、おおよその厚生年金の受給月額は表②の通りで、この厚生年金に、表①の国民年金を足した合計が受け取り額となる。
ところで、厚生年金の加入者は会社員というイメージが強いが、10月からはパートやアルバイトなど短時間労働者にも適用が拡大され、加入しやすくなる。
勤務期間は現在の「1年以上」から「2カ月超」に短縮され、事業所は「501人以上」から、「101人以上」へと引き下げられる。適用拡大で国民年金にプラスして生涯受け取る年金額を増やせることは老後の安心に直結する。
ただ、現実には「将来のことより、今の生活を優先したい」「手取りが保険料分減るのはいや」「扶養の範囲内で働きたい」など、適用拡大を望まない人がいるのも事実。
2016年の改正の際には、「年収の壁」を回避するために就業調整をする人よりも、労働時間を延ばした人が多かった。今の手取り額を優先するかは個人の働き方やライフスタイルとも関わるので一概にメリット・デメリットはいえない。