FIFAフットサルワールドカップでは、レジェンド三浦知良選手と共に日本代表を率い、Fリーグでは最優秀選手賞4回、得点王4回に輝くフットサル界のキング森岡薫選手。そのレジェンドが総監督としてサッカーアカデミー「FCREYS99」を創立。その第1校目が大阪・鶴見区に開校する。
アカデミーの目的は、フットサルやサッカーを通じた子どもたちの育成に加え、引退したプロ選手のセカンドキャリアの受け皿にするためだ。
それにしても、なぜ大阪を創立地に選んだのか─。
森岡選手はペルーの首都リマで生まれ育ち、少年時代はストリートサッカーに明け暮れた。そこで身につけたボールに対する執着心、負けん気の強さが、キングとして君臨する森岡選手の土台となっている。「ペルーでは、これでダメなら次はない。だから死ぬ気でやるしかない状況だった」。そのストリートで磨き上げたハングリーさが、大阪の子どもたちのプレーとダブった。
「息子のチームが東京から大阪へ遠征すると、決まってボコられて帰ってくる。サッカーが上手い選手はいくらでもいるが、それだけではプロの世界は厳しい。ルーズボールへ向かっていく気持ち、執念めいたものが大阪の子どもたちにある」
4月に開校するサッカーアカデミー「FCREYS99」。指導は森岡選手がスペイン1部リーグに所属していた頃の繋がりから、UEFA公認A級フットサルライセンスを持つスペイン人監督が来日して担当。森岡選手自身も試合の合間に月に1度は訪れるようにし、世界レベルの考え方を子どもたちに直接指導していく。
日本と海外の指導の違いについて「例えば日本ではリフティングを200回できないと試合に出してもらえないなど、オールマイティーな能力を求められるケースが多いが、海外は子どもたちの個性をコーチが観察し、得意を集中的に伸ばしてあげる指導。得意を武器にするから、チーム内での自分の役割もしっかり理解できる」と説明する。
一方、強いだけではなく、人間性を磨くことも重視。「礼儀や上下関係なども指導していく。浮世離れが原因で、引退後に落ちぶれる姿を見てきた。常に相手へのリスペクトがあれば迷子にならずに済む」。森岡さん自身、周りから偉大な選手と言われようと、常に感謝の心を忘れず、謙虚な姿勢を心掛けている。
ところで、フットサルは最近、日本でも注目の的だ。フットサルの戦術はサッカーの5年先を進んでいると言われ、強豪ブラジルでは小さい頃にフットサルをプレーしていた選手がサッカーW杯に出るケースも多いからだ。
サッカー日本代表を率いる森保監督もフットサルについて会見で「小さい頃からもっとやってほしい」と言及。「狭いスペースのなかで判断力と予測力が培われ、技術力も必要になる。それをフルコートで具現化できたら世界で勝っていける。フットサルにはサッカーに必要なものが詰まっている」と語っている。
森岡選手は「大阪を拠点にアカデミーを全国へ広めていく。そして、このアカデミーが引退後の選手の受け皿にもなれば、安心してフットサルで多くの人が夢を目指せるようになる。自分はフットサルに育てられたから恩返しがしたい」と未来を見据えている。