北新地のヘアセットサロンは〝スピード勝負〟 エリアでトップクラスの来店数

 仕事帰りのサラリーマンが通りを埋め尽くす頃、夜の繁華街北新地のとあるビルに、いつものように女性客が一人、また一人とすい込まれていく。彼女らのほとんどは夜のお店で働く女性で、出勤前のヘアセットに訪れている。そこは「女性専用ヘアセットサロン BAROQUE(バロック)」。

 この店に2年半前から勤める岡村亜伊さん(27)。美容会社で事務職のOLをしながら通信制で美容師免許を取得。その後、アルバイトとして同店に入社したため、技術面では未経験からのスタートだった。

 最初は「北新地のイメージって少し怖いのと、自分に勤まるのかなと不安でいっぱいでした」と亜伊さん。なぜなら1人のヘアセットを約10分で仕上げなければならない〝スピード勝負〟。手際が悪ければ女性客を不安にさせてしまうからだ。

 同店がピークを迎えるのは午後7時頃。さすがエリアでトップクラスの来店数だけあって、ひっきりなしに客が訪れてくる。その女性客たちを先輩スタッフが次々にヘアセットし送り出していく。まさに戦場だ。

 亜伊さんは最初、その光景に圧倒され、何をしていいか分からず、先輩の動きを見て学ぶので精一杯。そんな中、亜伊さんの支えになってくれたのも先輩スタッフだった。

 ピークが過ぎたころ、仲の良い女性客にモデルとして協力してもらい、丁寧に指導してくれた。練習用の人形は動かないからセットしやすいが、実際の客はそう簡単にはいかない。加えて頭の形や毛量は人それぞれ。こうした実践練習の甲斐あって、最初は10人仕上げるので精一杯だったが、今では20人以上送りだせるようになった。想像できないくらいのスピードで亜伊さんのスキルはどんどん上達した。「お客さまは常連の人が多く、みなさん快く協力してくださり感謝しています。最初はお客さまの多さに不安ばかりでしたが、逆にお客さまが多いおかげで技術も早く身につき、良かったと思っています」。未経験からスタートした亜伊さんは2年半で店長にまで登りつめた。

 亜伊さんによると「この店はスタッフ同士、仲が良い」のも長く続けていける理由の一つ。それはスタッフの技術が偏りのないように、特に指名制度はもうけていない。人気スタイリストに仕事が集中しないので、どのスタッフの技術も一定に保てるうえ、スタッフ同士の客の奪い合いも防げる。いずれもオーナーの気配りだ。

 「今は、お客さまと色々なお話をしたり、たまに相談にのることもあります。こうした会話も楽しいし、スタッフ同士も仲が良いので働きやすいです。お客さまが仕上がりを喜んでくれるところにやりがいを感じます」と亜伊さんは笑顔で答える。

■女性専用ヘアセットサロンBAROQUE