【FUTURE NAVIGATION 未来へ舵切る大阪の中小企業】
コーヒー取引の常識が今変わろうとしている。世界で1日に約20億杯飲まれるコーヒー。その価格は長年、生産者や買い手が直接触れられない〝ブラックボックス〟のような仕組みで決まってきた。ここにメスを入れ、流通の透明化を目指すのがTYPICA(ティピカ)だ。69カ国の生産者とコーヒー焙煎店(ロースター)や企業を直接つなぐ新しい取引の形で、コーヒーの可能性を広げている。(西山美沙希)

市場に左右されるコーヒー価格
コーヒーの価格は主に米ニューヨーク市場の先物取引を基準に決まる。市場で形成された相場が世界の取引価格の目安となる。代表取締役COOの葛西龍也さんは「コーヒー生産者の意図ではなく、市場や流通の中で価格が決まる仕組みに疑問がある。安く買い叩かれることも多い」と話す。世界の小規模生産者の約4割が貧困状態とも言われている。
流通にも課題があった。コーヒー生豆は通常コンテナ単位(約18㌧)で取引され、小規模ロースターが直接仕入れるのは難しい。そのため仲介業者を通す中で、複数の農園の豆がブレンドされるケースが多い。産地や農園ごとの風味や品質といった〝個性〟が消費地に届きにくかった。

麻袋1袋から直接つなぐ
そこで同社は、生産者とロースターをネットで直接つなぐプラットフォームを構築。麻袋1袋(約30~60㌔)から購入できるようにした。
ロースターが事前予約することで注文をまとめて生産者に伝え、売り先や数量の見通しを持てる仕組みだ。価格の根拠も共有され、取引の透明性も高まる。何より、小規模ロースターでも世界の生産地と直接つながり「自力では出会えないコーヒー」に出会える。
葛西さんは「すべてのコーヒーには生産地や生産者の物語がある。その価値をテクノロジーとコミュニティの力で伝えながら、必要な人に必要な量を適正な価格で届けたい」と語る。
森づくりで産地の未来守る
同社は生産地で植樹を進める「おかげさまの森」づくりも展開。コーヒー産地は標高の高い地域に多く、気候変動の影響を受けやすい。執行役員の渡辺直樹さんによると、2050年にはアラビカ種の栽培適地が半減する「コーヒー2050年問題」が予測されているという。
そこで「おかげさまの森づくり」では、世界中の生産者、ロースター、コーヒーを愛する人たちと共に、農園にコーヒーノキやシェードツリー(コーヒーノキを直射日光から守るための木)などを植樹し、コーヒーを栽培する環境の永続を目指している。
資金は生豆購入時の費用に上乗せする「参画金」を活用し、コーヒーの購入がそのまま森づくりへの参加につながる仕組みだ。活動はタンザニアやエチオピア、インドネシアなど5カ国で進む。
渡辺さんは「10年後にはおかげさまの森づくりによって年間1億本以上が植樹されることが目標。おいしいコーヒーを未来に残したい」と話した。

<取材協力>TYPICA Holdings/大阪市中央区南船場4−12−8 関西心斎橋ビル8F
※本企画は中小企業基盤整備機構 近畿本部の協力により制作しています。大阪・関西万博で同社の企画に参加した企業の取り組みを中心に紹介しています。
