【外から見た日本】成功への道 

Spyce Media LLC 代表 岡野 健将

Spyce Media LLC 代表 岡野健将氏

 最近の傾向として、ちょっとやってみて外から眺めた程度でわかった風に思い、それを切り捨ててしまう人が多い様に感じる。数日出社しただけで「この仕事は自分に合わない」と決めつけて会社を辞めたり、初めて会った人と少し会話をして時間を過ごしただけで「人として付き合う価値がない」と決めつけたり、スポーツや習い事を始めてみたけど「すぐに結果が出ないから」と言って投げ出してしまったり。そんな人が増えている気がしてならない。

 しかし物事はそんなに簡単でも単純でもない。中に入って時間をかけて体験してやり続けないと見えて来ない事もいっぱいある。何年間も下積みが必要だとは言わないが、一つの事に向き合うにはそれなりの時間が必要なのは間違いない。まずは面白さや惹(ひ)き付けられる魅力が見えるまではやり続けてほしい。それが成功への第一歩なのだから。

 日米を比較して大きく違うと感じるところはたくさんある。その一つが「失敗」についての捉え方。日本では一度の失敗で全てを失う可能性があり、だから難しいことや新しい事に挑戦せず、無難な選択をする傾向が強い。

 それに対して、アメリカでは、失敗する事自体は大きな問題ではない。よく言われるのが「10回失敗した人は10通りの失敗の仕方を知っているから、1回も失敗していない人より成功する可能性が高い」ということ。日本では10回失敗する事自体難しいが、アメリカでは10回失敗しても次のチャンスがある。「ある」と言うと語弊があるのだが、挑戦する人にはその権利があり、それを社会も周りの人たちも受け入れる。だから、いくつになってもチャレンジし続けられるし、過去の失敗から学ぶ事で成功に近づいていける。

 ところが日本では1回の失敗が致命傷になるため、2回め以降のチャンス が巡って来ない。「来ない」というより取り上げられてしまう感じかも。

 失敗しながらでも1つのことをやり続ければ、そのうち道は開けるもの。これもよく言われる事だが、「一つの事を10万時間やり続けるとその道を極められる」。これも事実であり、そこまでやり続ければ人並み以上の知識や経験、技術が身について、その分野で稼げる程度にはなる。

 10万時間とだけ聞くと途方もない時間に聞こえるが、1日8時間で週40時間ペースだと、1年は52週あるので約5年で達成できる。5年くらいなら同じ仕事や業務を続けている人はたくさんいるはず。あとは、その仕事にどれだけ真剣に向き合っているか。ただ単に時間を過ごしているだけでは何も学べないのは明らかなので、日々成長を感じられる時間の使い方をしているかどうかで成功に近づくか、同じ場所で足踏みしているかに分かれる。

 プロ野球ヤクルトの村上宗隆選手は最初の2年間、三振ばかりしていたが、チームは彼を使い続けた結果、史上最年少の三冠王になろうとしている。途中で三振を恐れて小さくまとまってしまっていたら、今の村上はいない。発明王エジソンも多くの成功を成し遂げたが、それよりもはるかに多くの失敗をしている。彼が途中で投げ出していれば、彼は成功者にはなれなかった。成功するまでやり続ければ、失敗で終わることはなく、必ず成功者になれる。

 途中でうまくいかなかった事は、失敗ではなくただうまくいかなかっただけのこと。そこから改良を加えて完成までいけば、それは成功であって途中の経験は失敗ではなく、成功へつながるプロセスの一部と言うことになる。

 どんな人でも一つの事を突き詰めてやり続ければ、おのずと結果はついて来るものだ。これは多くの成功者が言っていることなので間違いない。 そこまでやり続けられるかどうかだけだ。

 非正規だから時給が安い。正社員だけど給料が安いと言う前に、それなりの努力をして労働力として人並み以上に何か提供できるものを身につけているのか自問自答してみてほしい。10万時間に匹敵する様な努力を重ねて自分にしかできない何かを身につけたのか? そこまでやり続けるには、周りの目を気にせず、他人の意見に流されず、他人がどう言うか、思うか、ではなく、自分がどう思うか、感じるかを信じてやり続けることだ。そうする事で、人並み以上の事ができる様になる。

 そこまで達すると今度は自分なりの価値基準を持つ様になる。たくさんの事を経験、体験して、実績を積んで経験値を上げると自分なりの判断基準ができて、周りに惑わされる事無く、自分のやりたい事を突き詰めていく事ができ、そこには楽しさも面白さもあり、日々の時間を有意義に過ごせる自分がそこにいるはずだ。

【プロフィル】 State University of New York @Binghamton卒業。経営学専攻。ニューヨーク市でメディア業界に就職。その後現地にて起業。「世界まるみえ」や「情熱大陸」、「ブロードキャスター」、「全米オープンテニス中継」などの番組製作に携わる。帰国後、Discovery ChannelやCNA等のアジアの放送局と番組製作。経産省や大阪市等でセミナー講師を担当。文化庁や観光庁のクールジャパン系プロジェクトでもプロデューサーとして活動。一児の父。