増え続ける1日のコロナ感染者数に、不安がピークに足しいている人も多いはず。だが、冷静になって客観的なデータに目を向けると、陽性者数の伸びに比べ、重症者や死者は伸びていないもう一つの事実が見えてくる。
陽性者急増の一方、死亡率はインフルエンザ並みに低下している真実
増え続ける1日のコロナ感染者数を前に、メディアが騒いでいる。インフルエンザの場合、体調不良で病院を受診し、医者に「あなた、インフルエンザですね」と診断されて初めて「感染者」とカウントされる。その定義で行くなら、PCR陽性者は感染者ではない。だから、本記事では感染者と言わず、陽性者と言うことにする。
騒ぎ立ててばかりのメディアの報道に巻き込まれる前に、まずは冷静になって客観的なデータを見てみよう。
下のグラフはコロナ禍以降の全国の「新規陽性者」「重症者」「死亡者」の推移を重ね合わせたものだ。厚生労働省のオープンデータを情報源に、筆者が作成した。日別のデータをグラフにすると細かくなりすぎるため、傾向が視覚的にわかりやすいよう、7日間移動平均で計算し直している。
青の棒グラフは新規陽性者数だ。第1波、第2波と回を追うごとに、流行の山が確実に過去最多を更新しているパターンがお分かりだろう。メディアはこの青い部分ばかりを騒ぎ立てて報道している。
一方、下側のオレンジ色の棒グラフは死者数だが、陽性者の増え方に比べ、あまり伸びていないことがお分かりいただけるはずだ。赤色の折れ線グラフは、その時点で重症者が何人いるかの推移だ。第1波から第7波までのそれぞれの期間は、背景を白とグレーで区切ってみた。
グラフから分かることは、母数となる陽性者数の伸びに比べ、重症者や死者はあまり伸びていないことだ。
ウイルスは一般的に、自らが生存し続けるために感染力を増す一方、宿主(人間)を全滅させないように変異して弱毒化していくと言われるが、その特性がそのまま現れているように受け取れる。変異で逆に強毒化する可能性を指摘する意見もあるが、グラフが示す真実は、今のところ弱毒化していっているということだ。
例えば第4波の期間には、陽性者総数約35万人のうち、死者は6518人。この2つの数値を割り、死亡率は2%弱だった。同様の計算をしていくと、第5波の死亡率は0.4%にまで減少。続く第6波は、1日の陽性者数の最大値が5波の4倍に増えたが、死亡率はさらに半分の0.2%まで下がった。
現在の第7波はピーク前なので参考程度の数値ではあるが、7月28日現在までで計算すると、死亡率は0.04%と極めて低い。もちろん、ワクチンや治療法の確立などの影響もあるのかもしれないが、うなぎ登りの陽性者数に反し、死亡率がどんどん低下していっているのは紛れもないファクト(事実)だ。
下表は、コロナ禍全期間の死亡率を年代別、男女別で計算したものだ。「陽性者○人中1人が死亡」とわかりやすい表現に置き換えている。
これを見ると、高齢になるほどリスクが高まることが一目瞭然だ。例えば40代男性と70代男性を比べたとき、「58857÷1090」を計算をすれば、答えが53.99だから、「40代男性に比べ70代男性は約54倍のリスク」とも表現できるかもしれない。
こう見ると、大阪府の吉村知事がリスクの高い高齢者にのみ不急の外出自粛を求める一方、現時点で飲食店への時短要請やまん延防止の適用要請をしない方針も理解できる。
この記事で「だから大丈夫」と言うつもりはなく、今後も一人一人の感染予防が欠かせない点に変わりはない。
ただ、「過去最大」「最多更新」と、感染者数だけにスポットをあてた報道ばかりがあふれると、私たちは「コロナがますます大変な状況になっている」と勘違いしてしまいがちだ。
だから、事実を元にこうした別の視点も冷静に持っておき、今を正しく読み解くことが必要だ。