【短歌に込める経営者の想い⑦】創晶應心 社長(大阪大学教授)森勇介先生

(歌人・高田ほのか) 

 インタビューのはじめ、森勇介先生は「20歳まで自分に自信がもてなかったんです」と切り出した。幼いころ、お父さんからお前はだめなやつだと罵倒されることが多く、自分は出来が悪いと思い込んできたという。それを救ってくれたのがサンフランシスコ州立大学カウンセリング学科の名誉教授田中万里子氏だった。氏のカウンセリングを受けることで自信がつき、受け身な性格が変わっていった。そして、弘法大師の教えを説く高野山の中村公隆猊下大阿闍梨(だいやじゃり)の「自分を無理に着飾ったり、低く見積もったりしなくてもいい。自然体でいると人間はもっとすごいことができる。煩悩を正しく育て、世界を幸せにしなさい」という教えのもと世界平和という大きな煩悩を育て、世界で初めてCLBO結晶を発見。高品質なCLBO結晶の育成技術を確立した。

創晶應心社長で大阪大教授の森勇介先生

 先生曰く、研究というのは理詰めではなく〝勘〟が大切なのだそう。「CLBOの発見は弘法大師からの、お前が日本を守れというメッセージだったのかなと。CLBOは自分が生み出した子ども。この子を正しく世界に広めていきたい」と澄んだ目で笑う。

 相対した直後から、先生と対しているとあたたかい心地になるなと感じていた。それは、トラウマを乗り越えた者がもつ慈悲の佇まいだったのだ。

 インタビューの最後、先生は小学生のとき大阿闍梨の師にもらったという年賀状を見せてくれた。40年以上前の年賀状をいまも大切にしているのだ。そこには、朱の筆で「天衣無縫」と書かれていた。

結晶へ 業を落とせば 高野山 大塔の鐘 白く響けり

森先生(左)と高田ほのか

※CLBO結晶とは…赤外光から紫外光への波長変換特性に優れた全固体紫外レーザー光源
 ※天衣無縫…物事に技巧などの形跡がなく自然なさま。 天人・天女の衣には縫い目がまったくないことから、文章や詩歌がわざとらしくなく、自然に作られていて巧みなこと。 また、人柄が飾り気がなく、純真で無邪気なさま、天真爛漫らんまんなこと

【プロフィル】歌人 高田ほのか 大阪出身、在住 短歌教室ひつじ主宰。関西学院大学文学部卒。未来短歌会所属 テレビ大阪放送審議会委員。「さかい利晶の杜」に与謝野晶子のことを詠んだ短歌パネル展示。小学生のころ少女マンガのモノローグに惹かれ、短歌の創作を開始。短歌の世界をわかりやすく楽しく伝えることをモットーに、短歌教室、講演、執筆活動を行う。著書に『ライナスの毛布』(書肆侃侃房)、『ライナスの毛布』増補新装版(書肆侃侃房)、『100首の短歌で発見!天神橋筋の店 ええとこここやで』、『基礎からわかるはじめての短歌』(メイツ出版)  。連載「ゆらぐあなたと私のための短歌」(大塚製薬「エクエル(EQUELLE)」)