店舗デザインは「カッコ良さ」より「売れるか」 吉野家・ドムドムも手掛けたOLL DESIGN 大西良典さんの勝負哲学

 「店のデザインなんて、ファッションと一緒で好みなんですよ。それよりも大事なのはオープンしてどれだけ売れたか。お客さんがどれだけ来たかです」─。吉野家にドムドムバーガー、鳥貴族、一風堂など数多くの有名外食チェーンの店舗デザインを手掛けるOLL DESIGN(オールデザイン)=兵庫県芦屋市=の大西良典社長。設計士という枠を超え、チェーンストア理論と経験を武器に「利益の出る店」を作り続けている。戦う前から〝勝てる条件〟をつくる大西さんにノウハウを聞いた。(佛崎一成)

「売れる店をデザインすることが大事」と話す大西さん=2026年8月28日、芦屋市のOLL DESIGNのオフィス

 ─大西さんの店舗設計は、従来の設計事務所とはかなり考え方が違うようだ。

 店舗デザインはファッションと同じ。僕が「格好いい」と思っても、別の人は「ダサい」と言うかもしれない。そんな好き嫌いが分かれる部分より大事なことは「オープンしてどれだけ売れたか」「お客さんがどれだけ来たか」だ。

 例えば、20代をターゲットにする場合は「どんな照明や空間なら写真を撮りたくなるか」「SNSで拡散したくなるのか」を逆算してデザインする。

 ─「格好いい店」ではなく「売れる店」をつくると。

 その通りだ。数十万円のコストを掛けてこだわった内装にしても、お客さんが気付かなければ設計士の自己満足に終わる。「こんな格好いい店をつくりたい」から始めるのではなく、「誰に来てもらい、どう売るのか」を起点に設計することが大切だ。

 ─その発想は大手外食チェーンの本部側にいた経験が生かされているのか。

 僕は設計士として和食ファストフードチェーンの「なか卯」にヘッドハンティングされ、外食産業で初めて1兆円を突破したゼンショーのグループ会社に出向して、出店に携わってきた。そこでは店舗設計だけでなく、いつオープンさせるか、いくら費用を掛けるのか、本当にこの場所でいいのかなどまで管理していた。つまり、発注する側の立場にいた。

 この経験があるから発注者が何に困り、何を怖がり、社内で何を通さなければならないかという〝痛み〟が分かる。発注側が見ているのは「格好いい店」ではなく「売れる店」だ。

 ─独立したてのころは住宅なども設計していたと聞く。チェーン店専門の設計に舵を切った理由は。

 和食さとの重里社長から「お前、チェーン店専門やな」と言われたのがきっかけだ。その言葉を聞いた瞬間に「めちゃくちゃええやん」と思った。僕はチェーン店の内情を知っている。だから、チェーン店に特化した方が強みを出せると感じた。

─同じ飲食店でも個人店とチェーン店ではやはり考え方が違うか。

 全然違う。例えば、お母さんが一人で切り盛りする定食屋を思い浮かべてほしい。お母さんだからおいしい料理を作れるが、お母さんが休めば途端に店が回らなくなる。こうした一人の技術や経験に頼る「属人化」が、多店舗化する際の壁になる。

 一方で、チェーン店は料理経験のないアルバイトでも安定して商品を出せる仕組みづくりを重視する。誰かが休んでも別の人が入れば回るわけだ。だから100店、200店、1000店に拡大していける。

 ─確かに、「1店舗目は繁盛しているのに、2号店、3号店がうまくいかない」という個人店の声をよく聞く。

 属人化に頼り、仕組みをつくれていないからだ。料理だけではない。物件や値決め、人材育成、オペレーションなど全てを標準化していかないと多店舗化はできない。

オフィスの壁面には大西さんが手掛けた数々のチェーン店が並ぶ=2026年8月28日、芦屋市のOLLDESIGNのオフィス

 ─著書で「ダサカッコイイ」を提唱しているが、その意味はデザインよりも合理性ということか。

 そうだ。ただ、「わざとダサい店をつくる」という意味ではない。例えば、従業員が「ここに棚がほしい」と言う。でも棚を取り付けると少し見栄えが悪くなる。それならどうするか。

 お客さんは店に2時間ほどしか滞在しないが、従業員は毎日店で働くわけだから、使いやすくしてあげた方がいい。従業員のストレスを減らせばニコニコしながら働いてくれるから接客は良くなるし、お客さんと会話も増える。楽しんだお客さんは、再び来店してくれる。

 そう考えれば多少は格好悪くても、商売がうまくいくわけだから「カッコイイ」となる。それが僕の「ダサカッコイイ」の定義だ。

 ─大西さんは設計だけでなく、仕事の取り方もかなり戦略的だ。

 コンペに参加することがあるが、「一番格好いいデザインを出そう」と意気込むのではなく、僕の場合はまず相手を見るところから始める。例えば、創業社長が直接判断を下す企業なのであれば、〝ぶっ飛んだ〟案を出すのがいい。

 しかし、相手が大手企業なら、会長や社長が直接決裁することは少ない。代わりに中間管理職の部長や課長が決めるケースが多くなる。だから、中間管理職が何をしたら会社から評価されるのかを見極めることが大事だ。

 低コストで仕上げれば評価されるのか、手間を増やしたくないのか、社内で説明しやすいことが重要なのか…。

 低コスト優先なのであれば、「こうすれば安くできます。でもチープには見えません」という提案の方が通りやすくなる。戦う前から勝ち戦になる条件を持っていく。

─大西さんの考え方がよく表れているのが、ゴルフを活用したトップ営業だ。

 ゴルフは経営者と5時間ぐらい行動を共にできる抜群の営業ツール。最初は仕事の話を嫌がっていた社長も、ラウンドを終えるころには自然と仕事の話になるし、プライベートな家族の話まで打ち明けてくれる。応接室で1時間話をするよりも、ぐっと距離が縮まる。

 ─昔は相手にわざと負けてご機嫌を取る接待ゴルフがあったと聞くが、大西さんは正反対。相手に圧倒的に勝つゴルフを実践しているが。

 圧倒的にうまくなった方が、メリットが大きいと悟ったからだ。以前、ゴルフのうまい大学生とラウンドする機会があった。あまりにも上手いので、大学生に「どう打ったらいいですか」「何番のクラブを使えばいいですか」と尋ねた。このとき、無意識に敬語で尋ねていることに気付いた。つまり、ゴルフは会社の規模や役職に関係なく、上手な方の立場が上になるということだ。

 今では大企業の社長からも「大西君、スライスが直らない。どうしたらいいのかな」と聞かれる。大企業の社長もゴルフ場では「先生と生徒」の関係になる。このポジション取りがさまざまなことを有利に進めてくれる。

 ─ゴルフそのものより「自分のポジション」が大事ということか。

 セミナー講師をしていても同じことが言える。普段、僕に仕事を発注してくれる経営者も、セミナーでは「先生、これどうしたらいいですか」と聞いてくれる。つまり、仕事をもらっている僕の方が立場が上になっている。「仕事をください」という下請けの立場にいては、言われたものをつくるだけになってしまう。

 我々は「社長、それならこうした方がいいですよ」と言える立場にならなければいけない。

芦屋市にオフィスを構えるOLLDESIGN。壁面にも独自性が表れている

 ─大西さんはこれまで多くのチェーン店舗を手掛けてきた。その膨大な経験をAI(人工知能)を使って武器に変えられるのではないか。

 実際に始めている。過去に手掛けた大手チェーン店の図面や経験を膨大なデータとして蓄積しているから、例えば「ラーメン店をつくりたい」と言われたとき、データをAIで整理すれば精度の高い「勝ち筋」を提供できるようになる。約20年積み上げてきた経験を会社の「資産」にする発想だ。

 ─経験をもとに「売れる店」を科学するわけか。

 そうなったら面白い。これまで経験や感覚で「こうした方が売れる」と提案していたものをデータで示せるようになるわけだから。僕がいなくても、会社として同じ判断ができるようになるから「売れる店」の設計を仕組み化できる。

 ─話を聞いていると、大西さんが設計しているのは、店舗のデザインというより「勝ち方」そのものだ。

 店を格好良くするだけなら、できる人は他にも大勢いる。僕は「この店をどう売るか」「この会社でどう勝つか」を最優先に考え、その形をデザインに落とし込む。誰に売るのか、いくらで売るのか、どうしたら2店舗、3店舗と増やせるのか…。

 店をデザインするというより、店が勝てる〝土俵〟までデザインする。それが僕の仕事なのだと思う。

■OLL DESIGN株式会社/兵庫県芦屋市茶屋之町11-11/電話0797(35)8806

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