ナナメから見た基準地価 東京に比べ、大阪は安い 不動産が高騰していると言うけれど…

 大阪府の基準地価(7月1日時点)が発表された。コロナ禍からの回復で、商業地は前年比1・6%と2年ぶり、住宅地も0・4%と3年ぶりに上昇した。本紙ではこの基準地価をもとに、「高いと思っていた大阪は実は安い」の視点から特集してみたい。

 まずは発表された基準地価で、特徴的なニュースだけ取り上げておこう。

 商業地の上昇率1位は「箕面市船場東3─1─6」で、1平方mあたり59万円と前年(55万円)に比べ7・3%上昇した。地下鉄御堂筋線と接続する北大阪急行が、2024年春には千里中央から箕面市にまで延伸されるのが要因。付近に箕面船場駅も新設され、その周辺の再開発も進み魅力が高まっている。

 次いで「大阪市港区弁天4─12─8」が同41・5万円で5・9%アップ。市区町村別で見ても港区全体の商業地は5%の上昇率で府内1位。25年の万博会場となる夢洲へ地下鉄中央線が延伸されることが地価上昇の一因になった。

 住宅地の府内上昇率1位は都島区でプラス2・7%。特に地下鉄都島駅に近いエリアの上昇が顕著だ。

 要因については、キタ・ミナミの中心部が高騰し、周辺区に割安感が出てきたことが考えられる。読者の居住地の資産価格アップはうれしい限りだ。

さて、本題に入ろう

 基準地価の概要はこのくらいにして、記事タイトルの話題に移ろう。2012年に安倍政権が発足し、アベノミクスによる金融緩和がはじまって以降、不動産価格は上昇に転じた。

 なぜ、上昇するのかを簡単に説明してみたい。金融緩和は、日銀が国債をどんどん買い、その支払いにお金を刷る。世の中の物(商品)の量が変わらないのに、お金だけ増えるとどうなるかを想像してみてほしい。増えた側の価値が下がるから、1万円札の価値が下がることになる。

 しかし、財布に入った1万円札は8千円札や7千円札に変わるわけではないから、逆に不動産が上がることでバランスを取る現象が起こる。このカラクリで、タワーマンションを筆頭に、都心部の不動産価格が高騰したと言える。

 上のランキングは基準地価のトップ10を大阪と東京で比べたものだ。大阪に住んでいると、梅田近辺をはじめ、都心部の不動産価格が急騰していて「住宅を買うのも大変」というイメージを持ってしまう。しかし、もっと視野を広げて東京と比べてみると、大阪は安いことに気づく。


大阪市立総合医療センター前の都島通

 さらに視野を広げると、世界では日本よりもはるかにインフレが進んでいる。世界からすれば、東京の物件でさえ安く見えるはずだ。

 しかも今は円安。1年前の1ドル112円が今は144円だ。日本人感覚で計算し直すと、1億円だった物件が今年は7800万円にディスカウントされたイメージだ。

 最近、外国人が日本の不動産を〝爆買い〟しているのには、こういった状況が影響している。