下落に転じる中古車価格 2月に初の100万円超えから一転


▲車買取専門チェーンのユーポス和泉店(大阪府和泉市)

 「平均取引価格が初の100万円超え」など、半導体不足による自動車減産の影響で、中古車価格の上昇が続いている。ところが、中古車価格の基準となるオークション相場が、ついに下落傾向に入ったようだ。中古車相場は乗り換え時の下取り価格に影響するから、車を保有する読者にとっては関心事。現状と今後の予測について取材した。

高値から一転 中古車値下がりオークション相場が下落傾向

 「中古車高騰のニュースが報道されていますが、中古車価格の基準を決めるオークション相場はすでに下がり始めています」 こう話すのは、関西に16店舗を展開する車買取専門チェーン、株式会社ロードカー ユーポス事業本部で営業課長を務める冨田大輔さんだ。

 同社は中古車の価格変動による損失リスクを避けるため、買取から売却までの期間が短い。平均して2週間ほどで入れ替わるので、店舗で販売する中古車は常にリアルタイムの相場価格が反映されている。店で動きの悪い車両はすぐにオークションに出品されていく。

 冨田課長は毎週、オークションに出品する中で、市場の変化をいち早く感じ取っていた。150万円を見込んで出品した車両に、応札価格で120万円しかつかなくなったのだ。加えて、応札に参加する人数もこれまでの3分の1程度に減っていた。

 「2月上旬までは、価格がこちらの予想を上回ることがしょっちゅうだったが、今は完全に流れが逆に傾いている。輸出関係の仲間内でも、これまでは多少無理して買っていたが、今は買うかどうかを迷い、弱気になっている」

ロシアへの輸出減が影響

 原因はウクライナ情勢だ。中古車の最大の得意先であるロシア向けが、経済制裁で急減している。2021年の財務省貿易統計を見ても、ロシアが中古車輸出先の約16%に上っているから影響は大きい。

 中古車相場はこの先はどうなるのだろうか。

 株式会社ユーポスのプライシング事業部係長、細田良介さんによると、「平時に比べて、今は価格が乱高下していて、先が読みにくい。ウクライナ情勢や、新車生産の状況がどうなるかだ」と前置きした上で、「通常のセオリーなら、今の時期は下がりやすく、5月の連休ごろから再び上昇していく。ただ、昨年5、6月から中古車価格が急騰しており、いつ暴落するのか常に心配してきたので、今は上がり過ぎの感を受ける。今後、ピークを付けた2月初旬以上の高値を望むのは難しいかもしれない」とみている。

新車販売は〝弾不足〟トヨタ「ノア」「ヴォクシー」で4カ月待ち

 中古車高騰の原因は新車の減産にあるが、現在の新車市場の状況はどうなっているのか。

 大阪府内に19店舗を展開するネッツトヨタ中央大阪では、平時は1カ月ほどだった納車期間が3~4カ月に延びている。人気車種にもなれば半年以上というケースも少なくない。

 トヨタ自動車は昨年、徐々に半導体や部品の供給不足が解消されると見て、11月からの挽回生産を見込んでいた。しかし、実行できたのは12月のみ。1月は相変わらずの半導体不足に加え、コロナ感染拡大が影響し、再び減生産となった。

 トヨタ系ディーラーのNさんによると、「お客様からの受注数は前年とさほど変わらないのに、新車登録は前年比8割程度で推移している。つまり、せっかく注文が入っても納車が後ろにずれ込むから、売上が立たない状況」と、現場はまさに〝弾不足〟だ。

 現時点で納車までの期間はどのくらいなのか。車種別に見ると、ノアやヴォクシーはガソリン車で4カ月、ハイブリッド車は8~9カ月。ランドクルーザーに至ってはなんと4年待ちというから驚きだ。同車は新車価格で700~800万円だが、品薄を理由に1000万円を超える中古車も出回っている。ちなみに納車の期間は、あくまで現時点のものであり、確約はできない。

 納車の遅れは現場での新車営業も難しくしている。従来なら車検まで残り6カ月の顧客に連絡し、乗り換えを提案していたが、「今は13カ月前に早めないと、納期が怖くて商談できない」(Nさん)。

 では、新車への乗り換えを予定している人で、車検切れが迫っている場合はどうすればよいのか。

 Nさんは「その場合は、いったん車検を通すしかない。若干のマイナスは出るかもしれないが、車検付きなら下取り価格も上がる」と説明した上で、「乗り換えを提案したお客様の中には、半年経って走行距離が増えてたのに下取り価格が20万円上がったケースもあった。今は下取りが高いので、得という見方もできる」と話している。