▲「みやの湯」で行われた「集いの場」。地域包括支援センターと協力し毎月開催。脳トレや手足を動かす体操をしている
「今日紹介するのはセンターの中でも若い会員さんですよ!」その会員の年齢を聞くと「65歳」。年金受給も始まっているような高齢者でも「フレッシュな人材」として活躍できる場、それが「シルバー人材センター」だ。
「生きがい」と「交流」がカギ
「前向きさ」がリスクを防ぐ
「人生100年時代」と呼ばれる現代。心身共に健康な状態で長生きするには、運動や食事に気を使うことももちろん必要だが、加えて「生きがい」も大きな要素になる。
人生でより高い目的意識を持っている人々は、死亡リスクや心血管疾患の発症リスクが低く健康寿命が長いことが、ニューヨーク州マウントサイナイ医科大学研究チームの調査で明らかになっている。また、英国のラッシュ大学医療センターが実施した「ラッシュ記憶・老化プロジェクト」の調査によると、人生に前向きに取り組んでいるという意識をもつ高齢者の脳では、そうでない高齢者に比べ、脳梗塞が半分に減ると示されている。生きがいを持ち前向きに取り組むことが病気予防にもつながっている。
▲職人のまなざしで植木を扱う山田さん(植木の剪定(せんてい)業務)
一方で、高齢者の課題として「孤立」が挙げられる。昨今の新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛期間が続く中で、より深刻化しているのが現状だ。
自宅にこもりきりの状態が続くことで認知機能の衰えや運動機能の低下を招くだけでなく、外との接触が少なくなることで気持ちがふさぎ込む。そして「体が思うように動かない」「外に出る気力がない」と、さらに自宅にこもる、という悪循環に陥っている。
やはり「人と関わる」こと、さらに言えば「社会の一員として活躍すること」が長生きにつながる。そして、「いくつになっても働き続けること」が、前述の状態を満たすには最適だろう。
「働くこと」と地域の福祉
とはいえ、高齢者が働ける場を見つけるのは一般的な求職と比べると難しく、働く本人も身体的な制限が多い。そこで、「60歳以上」を条件に、派遣や請負・委任で高齢者向けの仕事を紹介する「シルバー人材センター」が全国各自治体に設置されている。
全国のシルバー人材センターが会員数に伸び悩む中で、会員数を着実に伸ばしているのが「門真市シルバー人材センター」だ。
同センターでは、会員一人一人の身体状況や性格に合わせ、本人の「得意」「好き」をなるべく生かし、無理なく長く続けられるよう仕事の紹介を行っている。多様なニーズに応えるために、一般の人材派遣業に劣らぬ営業力で、マクドナルドから町工場まで幅広い企業への職業紹介を可能にしている。加えて、自社でも訪問介護サービスや喫茶店運営を行い就労の場を提供している。
活動の幅は就業あっせんにとどまらない。地域の包括支援センターと連携し、体操や交流サロン等を運営。参加者だけでなく運営スタッフとしても会員が携わっている。
地域の高齢者がなるべく孤立せず、「社会から必要とされている」という実感を持てるように、同センターはさまざまな「場」を提供し、人と人とをつなぐ役割を果たしている。そしてこれらの取り組みが地元門真の高齢者福祉に大きく貢献していることは言うまでもない。
コロナ禍においても同センターの前向きな姿勢は変わらない。学校の消毒業務やワクチン接種会場の整理業務など、この時期ならではの仕事を紹介し、また感染対策を徹底した上で集いを持ち続けるなど、工夫をしながら歩み続けている。
心から「若作り」をしよう
▲子どもたちに囲まれて笑顔の吉田さん(保育補助)
会員に働く動機を尋ねると、「お金のため」と答える人は少ない。それより「体を動かしたい」「誰かの役に立ちたい」「人と関わり続けたい」といった答えが多かった。
取材で出会う会員に共通する特徴は、その「若さ」。テキパキ働く様子も相まって、実年齢より10歳程若く見える人も。仕事に対して前向きな姿勢を持ち、余暇も充実させ、心も体も若々しくエネルギッシュな人ばかり。
門真保育園で保育補助として働く会員の吉田英美子さん(79)は、「保育士の方々やシルバー会員の仲間と一緒に働けてうれしいです。『子ども好き』が仕事に生かせて幸せですね」と語る。
「若さとは、人生の或る期間を言うのではなく、心のひとつの持ち方を言うのだ(『青春』、サミュエル・ウルマン)」という言葉がある。元気に長生きするには、いつまでも生きがいを持ち、仲間と共に、前向きな心を保てる環境に身を置くことが必要だろう。同センターには、いくつになっても仲間と共に青春を謳歌(おうか)する人がたくさんいるのだ。