【対談シリーズ】浜村淳さんと学習塾社長の滑らない話

ラジオパーソナリティー 浜村淳 × 個別指導キャンパス代表取締役 福盛訓之

ありがとうの一言が空気を和らげる(浜村)
人のために生きることに値打ちがある(福盛)

 〝笑う門には福来たる〟のように、いつも笑って暮らしている家庭には幸運がやって来る。心掛け次第で暗くも、明るくもなるのが人生。そうだとすれば、心をいかに育むか。新教育総合研究会「個別指導キャンパス」の福盛訓之代表が、各界の人たちと語り合う。対談シリーズの2人目は、毎日放送ラジオの長寿番組「ありがとう浜村淳です」パーソナリティーの浜村淳さん。

はまむら・じゅん
 1935年、京都市出身。同志社大文学部新聞学科卒業。渡辺プロダクションを経て現在は昭和プロダクション所属。毎日放送ラジオ番組「ありがとう浜村淳です」パーソナリティーを74年から務めている。映画評論家。映画の世界を語らせれば右に出る者はいないとされている。

 ―福盛さんは1973年生まれで、翌年の74年に浜村さんのラジオ番組「ありがとう浜村淳です」は始まりました。

福盛 「ありがとう浜村淳です」は大阪、関西の在住者にとって子守歌代わりです。関西エンターテインメントの大御所である浜村さんは、ラジオ文化を築いた人だと思っています。

浜村 それはそれは、ありがとう(笑)。

福盛 本当に言葉遣いが丁寧で、しかも品格がある。腰の低さも魅力的です。

浜村 謙虚であらねばならない。相手の顔を立てることが大切だと思っています。

 ―席が温まったところで、浜村さんにラジオ番組への思いを語っていただきます。

浜村 私は番組で送付するプレゼントに手紙を添えています。「明るい陽ざしにありがとう! そよ吹く風にありがとう! さえずる小鳥にありがとう! 流れる水にありがとう! そして…(中略)あなたにありがとう」と。ありがとう、と日本人は言いにくいようですね。例えば、夫が妻にありがとうと言うことに照れてしまう。でも、そうでない。気軽にありがとうと言いましょうというコンセプトで、この番組は始まりました。どんなもめ事があっても、ありがとうの一言で空気を和らげ、問題を解決する。いい言葉だと思います。


ふくもり・としゆき
 1973年、大阪市出身。同志社大学在学中の19歳で起業。96年に新教育総合研究会「個別指導キャンパス」(大阪市北区)を設立。個別指導塾を全国約300教室で展開。第21回稲盛経営者賞第1位、第1回大阪府男女いきいき事業者表彰優秀賞、紺綬褒章など受賞多数。

福盛 私は学習塾を起業して28年になりますが、つくづく思うのは素直、謙虚、感謝の大切さです。どんなに勉強が優秀でも、この気持ちが欠けていれば、だめになってしまう。私の教え子に四條畷市長の東修平さんがいます。彼は京都大大学院から外務省に入りましたが、人口減少に直面する古里のため、熱意一つで2017年の市長選に立候補し、初当選しました。当時28歳で、全国最年少の市長でした。私は彼を教えていた頃から「お金もうけだけの人生はもったいない。人のために生きることに値打ちがある」と話していたので、人のため社会のために人生を歩む姿をうれしく思っています。

浜村 福盛さんの教え方は人づくり、国づくりですね。

 ―福盛さんが重視する「素直、謙虚、感謝」は、浜村さんの「ありがとう」と通じるものがあります。

福盛 私が中学生の頃は校内暴力が激しい時代でした。生徒は授業中にマージャンしたり、校舎内でバイクを乗り回していた。勉強できる環境にないため、私は勉強のやる気を失っていたのですが、塾に入ったら、やる気が出た。学校がだめでも、塾に通えば、救われると実感しました。この原体験がきっかけになって、私は大学生の頃の93年に学習塾を起業しました。96年に設立した個別指導キャンパスは高品質で低価格の教育を実践し、全国に広げることを目指しています。現在は、近畿圏を中心に全国で約300教室の個別指導塾を運営し、小中高の児童・生徒約1万7千人が通っています。

浜村 それはすごい。講師は何人ですか。

福盛 約4千人。大半が大学生です。

浜村 兄貴の下で勉強する感じですね。講師と児童・生徒の「つながり」も生まれるのでは。

福盛 児童・生徒にすれば、好きな講師なら頑張れる。社会人の方が知識はあるかもしれませんが、大学生の方が良き相談者になり得ます。

浜村 ヒューマンなつながりですね。ところで、先ほど「高品質で低価格の教育」とおっしゃいましたが、それで採算が取れるのでしょうか。

福盛 取れます。個別指導キャンパスの評判は口コミで広がり、入会する児童・生徒の数は増えています。このため、広告宣伝費がそれほど掛かりません。もうひとつの特徴は、講師に対する個別指導専用教材と生徒指導マニュアルを制作し、ノウハウを標準化していることです。つまり、講師の指導力に左右されないようにしました。講師といっても、大学生は指導の素人です。この点を補うことに成功しました。

浜村 福盛イズムが講師を通じて児童・生徒に伝わっているわけですね。

 ―話は尽きませんが、そろそろ結びにしたいと思います。浜村さん、児童・生徒や保護者の方々にお薦めの映画を紹介してください。

浜村 『二十四の瞳』。瀬戸内海に浮かぶ小豆島を舞台に女性教師と12人の子どもたちの交流をつづった木下恵介監督(1912~98年)の傑作です。学校でいじめがあっても、「知らなかった」という先生の多い現代社会ですが、この作品が映し出す美しい景色と愛情は心に染みます。

 ―心を育む1本ですね。本日は、ありがとうございました。

(司会は深田巧、写真は佐々木誠)