週刊大阪日日新聞

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2022/11/12

経営者の声 大宝グループ会長 野田野田(のだ)武臣(たけおみ)さん

「勝負勘」には人生が詰まっている


プロフィル
 1944年1月18日、長崎県壱岐市生まれ。5人兄弟の末っ子。父は戦死し、母子家庭で育つ。中学卒業後、「早く親孝行したい」と大阪の旋盤工場に就職。独立して鉄工所を興すも過剰な設備投資が要因で倒産。その後、不動産仲介会社の営業マンで再出発するが自主廃業。建売住宅会社営業マンを経て、89年、建売住宅会社「大宝建設」を創業。現在は分譲・賃貸マンション、損保代理店なども経営し、大宝グループを構成。神社仏閣や故郷・壱岐市の支援活動に熱心なことでも知られる。

 大宝建設(門真市)会長の野田武臣さん(78)を評して多くの人がこう語る。「勝負勘が素晴らしい」と。決断を求められるいざというときに周囲の環境、時代の流れなどを読みながら、先読みできる能力、とも言えようか。長崎県壱岐島出身の野田さんが中学卒業後、金の卵≠ニ期待された大阪で、どのようにして勝負勘を磨き、年商100億円近い企業グループに育て上げたのか、その秘訣(ひけつ)を語ってもらった。(聞き手は猪口隆記者)

ターニングポイントで求められる決断

 経営者には、ターニングポイントともいえる会社の浮沈をも左右する、決断を求められる時が何度かある。その判断によって、会社を軌道に乗せたり、路頭に迷わせたりすることがある。経営者の経験がある人なら理解してもらえると思うが、その厳しさは、想像を絶するもの。責任の重さゆえに重圧に屈し、自死を選択する経営者もいる。

 そうした中で、身に付けていった勝負勘や先読みできる能力は一朝一夕で身に付けることができるものではない。私のあらゆる出来事の人生が詰まっている。

 母子家庭だった壱岐島での中学時代に「どうしたら母親を楽にさせることができるか」と考え続けた日々、就職した大阪の鉄工所で公園の水道水を昼食代わりにして空腹をしのいだ休憩時間のこと、「野田鉄工所」の看板を掲げ事業家として独立の夢を果たしたものの、過剰な設備投資が裏目に出て会社を整理し、6千万円の借金返済のため、家族と別居して車上生活を余儀なくされた砂をかむような思い出…。

七転び八起きの人生

 失敗を重ねながらも一歩ずつ前に進み続けた七転び八起きの人生は、今思えば、その一つ一つの出来事が勝負勘を養うことにつながっている。特に力を入れたのが、経済の仕組みを理解していくこと。経済が分からずして、経営者としての勝負勘を身に付けることができない、と考えたからだ。学校で学ぶような座学ではなく、生きた経済≠フ知識を身に付けるのに必死だった。

組員に学んだ法律の大切さ

 そのきっかけは20代の頃、大阪・ミナミの公園で知り合った男性に、ヤクザの組員と知らず金を貸したことだった。返済されないため、組事務所を訪ねたところ、組員から貸し金に関する法律を耳にし、世の中は法律でルールが決まっていることを痛感。古本屋で六法全書を買い、1週間で読破した。

 仕事のない日は大阪地裁に出向き、公開されている裁判を傍聴し続けた。小切手や手形、割り引くという言葉も理解できるようになった。

 経済の専門書を読みあさり、疑問点があると、税理士や会計士など経営の専門家といわれる人たちにアドバイスを求めた。倒産と自主廃業を体験した教訓もその後の会社経営に生かしており、1989年に大宝建設を創業してからは私の決断に大きなミスはない。

高級老人ホームの転売


▲大宝建設が建設した高級有料老人ホーム

 2003年、神戸市垂水区の2千坪の敷地に高級老人ホームを建設した際も、老人ホームを経営していくか、「購入したい」という医療機関の要請に応えて転売するか、二者択一の回答を求められ、転売を選択した。

 当初、大宝建設で高級老人ホームを運営していくことも考えたが、異業種からの参入が相次ぎ、入居保証金が年々下落。将来性の魅力が薄い、と判断し転売に踏み切った。

 10億円の販売金額が入り、会社経営を続けていく上で10年間は資金面で心配する必要はない、と思った。

「シニア女子プロゴルフ大会」を開催


▲「2006大宝マイスターゴルフカップ」の表彰式で優勝した大城あかねプロと握手する野田さん

 私が決断を要した事業は数多くあり、阪神間のゴルフ場を使って05年から3回にわたって開催した女子プロのシニア大会は特に思い出深い。

 当時、シニアの女子プロゴルフ大会は開催されておらず、「日本にも女子プロのシニア大会を根付かせたい」という、女子プロゴルフ関係者の切実な要望に応じてスポンサーになることを引き受けた。

 大会には50人の女子プロが出場。女子プロゴルフ協会の樋口久子会長も会場に駆けつけ、大きな盛り上がりを見せた。

 大阪日日新聞とサンテレビが積極的に報道したこともあり、金融機関の信用が高まり、知名度も上昇。3年間で総額1億5千万円かかったが、成功だったと考えている。

融資申請資料を見て経営難を直観

 さらにグループ会社で金融業もやっており、融資の案件についても、私の勝負勘を生かして、危機を乗り越えたことがあった。当社に融資を要請してきた大手私鉄関連の工事を請け負っていたA建設会社は、三重県内で100年の実績があり、業績も安定していた。

 A社の融資要請に対し、当社の幹部は「問題ない」として融資申請依頼の文書を私の所へ出してきたが、A社の資料を見て、地元の優良企業をA社の保証人につけてもらうように指示。その後、A社は半年後に倒産したが、融資全額を保証人から回収できた。

 提出されてきた資料から設備投資の過大さと、過払い金の膨大さが目に留まり、必ず数カ月後には苦しくなる、と推測。危機回避のため保証人を付けてもらったことで、被害を出さなくて済んだ。

多彩な人脈からも勝負勘を養う

 勝負勘は多彩な人脈からも養うことができた。浜村淳さん、唐渡吉則さん、星野仙一さん(故人)ら著名人と交流していく中で、人それぞれの考え方、判断基準を知り、人間の幅を広げていくことに役立てた。

 10年ほど続いた4人会(吉岡利固大阪日日新聞社主、川辺清五苑マルシン社長、稲田二千武ファミリーイナダ社長、野田会長の創業経営者4人のグループ。吉岡社主と川辺社長は故人)の吉岡社主からは「結論が出るまで、とことん考え抜け」と言われた。

 三井住友銀行頭取だった西川善文さん(故人)とも親しくしてもらい、聡明さと瞬時の決断力にいつも感心していた。2年前に亡くられた際、お別れの会に企業関係者で招かれたのは私だけで、銀行関係者が驚いていた。西川さんを通じ私も成長させもらったと感謝している。


バブル崩壊を乗り越え事業を拡大


▲2006万円で購入し話題を呼んだ「2006ワールドカップ」記念の純金のサッカーボール

 タイヤ販売店の2階を借りて大宝建設を創業した1989年は、バブル景気最後の年といわれ、翌年1月4日の大発会以後、株価の大幅下落が始まり、バブル景気崩壊の道をたどることになる。

 大宝建設は厳しい経済情勢にあっても、地域密着の営業スタイルで着実に業績を伸ばし、顧客の 信頼を獲得。94年に株式会社化。翌年には年商10億円を達成した。

 98年には現在の本社に移転。「大きな宝の大宝建設」といったラジオCMも評判を呼び知名度を高めていった。さらに2006年には、2006サッカーワールドカップを記念した金のサッカーボールを2006万円で購入。話題を呼んだ。


編集後記

 企業経営に欠かせない要素として「人・物・金・情報」 といわれるが、野田さんの場合、特に人と情報を重視していることがうかがわれる。

 人については「金を追わず人を追う」と語り、とことん人に愛情を注ぎ、信頼関係を築き上げている。

 協力会社の社長からも「野田さんのためなら」という言葉を何度となく耳にした。「三方良し、利他の精神ですよ」と野田さんは話すが、言葉だけでなく実践していると ころに野田さんの素晴らしさがある。

 また情報については、そのネットワークの広さ、先読みする力が傑出しており、銀行マンが経済情報を聞くため、野田さんの職場を訪ねるほど。野田さんの体験に基づいた生きた経済学≠ヘ優れた勝負勘や決断力を生み出す土台にもなっている。

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