週刊大阪日日新聞

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2021/11/27

つながった地域の「絆」

民間障害福祉サービス企業の挑戦物語


▲2224枚の手形をつなぎ合わせて完成した「絆」の文字

 2021年10月10日、守口市立大久保中学校のグラウンドに縦25m×横15mの巨大な「絆」という文字が浮かび上がった。障害福祉サービスを展開するオールケア守口(守口市大久保町、吉田広美社長)と同市による協働事業として開催された「ふれあい祭り」の目玉企画として制作されたものだ。一民間企業が自治体や地域住民と協力してお祭りをする理由は何なのか、その背景を取材した。

守口市と協働で「ふれあい祭り」を開催

福祉は暮らしやすい街づくり

▲西端勝樹守口市長(右)も手形モニュメントに参加した

 「障害のあるなしに関わらず、地域の一員として共に暮らす社会を築いていきたい。福祉は暮らしやすい街づくり≠セと考えています」―。

 今から3年前、記者が吉田社長に初めて会った時に聞いたこの言葉がとても印象に残っている。オールケア・グループは重度の障害がある人や医療的なケアが必要な人を対象に生活介護(デイサービス)や訪問介護、相談支援などを行っている民間企業。「高齢の独居の方や障害がある方はどうしても地域で孤立しがちになる。施設に入所しても外の世界と隔離されてしまう。福祉サービス事業所と地域の交流が不可欠なんです」と吉田社長は熱を込める。

町内会や地域活動に参加

 元々ふれあい祭りは「地域のお祭りに行ったことがない」と言う利用者の声を受けて、2007年に事業所内で開催したのがきっかけ。その後、「地域の人にも交流の場を広げたい」と公共施設での開催を夢見たが、前例のないことに地域や行政の対応は厳しい。

 「営利目的の企業がやることだから≠ニ言われて思わずけんか腰になったこともありました(笑)。でも私たちが一方的にやりたいことを言っても片思い≠フ状態。だから、私たち自身が町内会や地域活動に積極的に参加し、地域の課題を共有しました」と吉田社長は振り返る。

地域の学校での開催が実現

▲守口市のシンボルキャラクター「もり吉」もライブ配信に乱入!?

 すると、理解者が日に日に増え、14年からは念願の地域の学校のグラウンドでの開催が実現。各学校や各町会が「これ使いや」とテントを貸し出してくれたり、ボランティアで祭りの運営に参加してくれる人も現れ、500人以上の地域住民が参加する一大イベントになった。

 障害者と健常者が同じ時間と場所を共有することでさまざまな「変化」もあった。最も感性が豊かなのは子どもたち。翌日から施設の中をのぞいて「あ、〇〇ちゃんや」と遊びにきたり、中にはピアノを弾いてくれたりすることも。大人も施設の前を通る時に利用者に挨拶をしたりと今までになかった「コミュニケーション」が地域に芽生えた。

コロナ禍でも諦めない

 コロナ禍では多くのイベントが中止や延期を余儀なくされている。福祉の事業所として感染対策を徹底することは当然だ。しかし、終わりが見えない状況の中でせっかくできた「つながり」を途絶えさせてはいけない。議論を重ねた結果、「今こそ誰も孤独にしない。できないと諦めるのではなく、どうすれば実現できるかを実行委員で考えた」(吉田社長)と奮い立ち、20年は初めてYouTubeでのライブ配信というリモート形式で開催した。

守口市と協働





▲障害の垣根を超えて500人以上の地域住民が参加した過去のふれあい祭りの様子

 これらの実績を掲げて同市の令和3年度実施分公募型協働事業に応募したところ、見事に採択され、今年は初めて市と「協働」でのオンライン開催となった。「共に支え合うまちづくり」をテーマに障害者も健常者も一緒に参加できる企画を考え、たどり着いたのが「巨大手形モニュメント」の制作。事前に同社や他の障害福祉事業所をはじめ、市役所、市立図書館、南部・東部エリアコミュニティセンターなどの公共施設で手形スタンプへの参加を呼び掛けたところ、2224枚の手形が集まった。当日にはその手形を同中学校のグラウンドでつなぎ合わせ、大きな「絆」の文字を完成させた。モニュメントはドローンを使って地上50mの高さから撮影し、ライブ配信。地域の学校や町内会、お店などからのビデオレターやクイズ大会なども実施され、多くの市民がオンラインで「交流」した。

 「手形は2千枚を目標にしていたが前日にも駆け込みで持ってきていただき、予想以上の反響でした。大阪府立守口支援学校や地域の小中学校、大阪国際大学の地域協働センターなどが積極的に子どもたちに声をかけていただき、地域とのつながりを実感することができました」と吉田社長は協働事業のメリットを実感する。

行政側にもメリット

 市としても今回の取り組みで新たな発見があったようだ。同市・障がい福祉課の西尾直樹主任は「オールケアさんには障害福祉や地域との共生のノウハウがあり、行政では及ばない柔軟な発想に驚かされるばかりでした。地域のお祭りが軒並み中止になっている中、オンラインで開催ができたことも大きい。障害がある方とない方が一つのお祭りを楽しむというのは全国的にも少ない。市としては一つの事例ができたことで、他の地域や自治体にも紹介していきたい」と話す。

 吉田社長が目指す「暮らしやすい街づくり」がこれからどのように発展していくのか。同社の挑戦はまだまだ始まったばかりだ。

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