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2021/9/25

そうやったんや! 畑山博史のわかるニュース

テロとの戦いとは結局、何だったのか? 9・11から20年 米軍のアフガン撤退

中東各国への民主化押しつけのツケ

 2001年世界を震え上がらせた「9・11」同時多発テロ。イスラム系過激派アルカイダが旅客機4機をハイジャック。米ワールドトレードセンターなどが突入自爆テロに襲われ日本人24人を含む2996人が亡くなり負傷者は2万5千人を数えた。あれから20年。「9・11」直後に米軍が攻撃せん滅したはずのアフガニスタンのタリバン政権に、米軍が逆に追い出されるように首都カブールから撤退。あの崇高なはずだったテロとの戦い≠ニは何だったのか?

民間人36万、米軍7000の犠牲、ISの誕生…

中東のパンドラ開けたブッシュJr.

 米ブッシュJr.大統領が「現代の十字軍がイスラムの悪と戦う」と表して始まった「9・11」報復としてのテロとの戦い=B20年間のこの戦いで全世界での死者は、民間人36万人超、米軍では7000人を超えた。米国が費やした戦費は880兆円で、国家予算2年分に相当する。

 大統領は判断を誤った。当時、すでに在外米大使館や駆逐艦に次々自爆テロが仕掛けられていたのに「まさか米国内では…」とアルカイダを甘く見ていた。ブッシュJr.大統領は「反米政権を武力で倒した第2次世界大戦時の日独」を例に挙げ、「その後に親米政権が育つ」と思い込んでいた。ところが、イラクではフセイン政権崩壊の代償に「イスラム国(IS)」という怪物が生まれ、アフガンでは20年掛かってもタリバンを掃討できず実質的に敗れる結果となった。

 「9・11」直後、ブッシュJr.大統領はアルカイダの首謀者オサマ・ビンラディンをかくまった疑いだけで「同罪だ!」とアフガンを攻撃。圧倒的な兵力差でタリバン政権を倒し、親米新政権を樹立した。するとそれまで不人気だったブッシュJr.の支持率は一気に上昇。さらに03年には、後に虚偽と分かる「大量破壊兵器保有」を口実にイラク戦争を仕掛けた。アフガンから逃げ延びたビンランディンをパキスタンで殺害した時には米大統領はオバマ時代に入っていたが、米軍アフガン駐留はさらに10年の年月を擁し計20年に至る泥沼に陥った。アフガン駐留の20年は結局何も生まなかった。

 アフガン撤退を決めたのはトランプ前大統領で昨年2月にタリバンと一方的に合意。時計を巻き戻すはずのバイデン新大統領はなぜか撤退方針を丸のみし、8月末の撤退劇のドタバタで国内支持率は就任以来最低に落ち込んだ。

中村哲医師も草葉の陰で

 アフガンを地政学と歴史からおさらいしてみたい。アジアと中東の間にある内陸国で、西にイラン、東はパキスタンに挟まれ、北にトルクメニスタン、ウズベキスタン、ロシアの旧ソ連3国、そして意外に知られていないが、回廊のように延びた部分で中国と計6カ国に接している。国土の広さは日本の1・7倍だが、人口は逆に3分の1。国土の75%は山岳地帯で15前後の多民族で構成されている。大英帝国侵攻を阻止し、1979年から11年かけて旧ソ連を撃退。そして今回、米国も追い出されたことになる。

 タリバンは旧ソ連との戦いで成長。厳格なイスラム法による独裁支配で、欧米型の民主主義とは相いれない。20年前の支配体制時と違い、テレビやSNSを使った情報発信も活用。指導者層は高学歴で国際政治も理解しているが、下級兵士は読み書きできない者も多く、統率が取れ訓練を受けた軍隊組織とは到底言いがたい。

 主な収入源は国境関税と麻薬ぐらいで、いち早く支援提携を申し出た中国とは良好な関係にならざるを得ない。中国としては、イスラム教徒の多い新疆ウイグル問題に干渉させたくないし、逆にアフガン国内で手つかずのレアメタルなどの採掘権は魅力という計算がある。

 タリバンにも内部抗争があり、穏健派より武闘派の方が優勢。論功行賞さえ与えればある程度不満は収まるので新政権の主要な顔ぶれは均衡形だ。国内では旧親米政権の残党と、ISホラサン州支部が三つどもえで今も小競り合いを繰り返している。タリバンとISはイスラム教スンニ派同士だが、国内のことにしか興味のないタリバンに対し、ISはさまざまな地に支部を置いて世界革命を目指している。

 日本から人道支援に尽力した中村哲医師は襲撃殺害され、その功績をたたえる壁画はタリバンの手で塗りつぶされた。ノーベル平和賞のパキスタン人女性マララ・ユスフザイさんはパキスタン・タリバンに銃撃され重傷を負った。国際支援を受けようと西欧各国との協調姿勢を示すタリバンの素顔を甘く見てはならない。

 政権交代の経済混乱と干ばつでアフガンに食糧危機が迫る。人々は人権よりまず命を守ることに懸命だ。公務員などの知識層はタリバンからの報復を恐れ、国外脱出を計画。女性への抑圧問題を含め混乱は長引きそうだ。

 今、地球上は民主国家より独裁専制国家の方が、意思決定が早く優位にある。コロナ禍で皆は国内問題に精一杯なので、中国が絡んだ香港や新疆ウイグルへの弾圧、さらに軍事クーデターのミャンマーも国連を含めた世界からの干渉はなかなか届かない。

米軍、武力行使の限界

 米軍のアフガン撤退期限ギリギリにカブール空港入り口で起きたISの自爆テロ。最後の最後で13人の米兵士を失い、米軍は車両や武器、装備62億円分を放棄して、夜陰に紛れ司令官が軍用機で最後に飛び去った。勝ち誇ったタリバン兵がそれらを身に付け、気勢を上げていた姿が象徴的だ。

 アフガン戦争では、最新装備を持った米軍が追ってもタリバンは山岳地帯や隣国パキスタンに逃げ込む。市民の中に潜り込んだ彼らを区別して掃討するのは実質不可能で誤爆が頻発。無人機を飛ばし攻撃するにも、アフガンへの直近基地から1500キロ離れているため、飛行に6〜8時間も掛かってしまうから不可能。中東各国に米国的価値観を押しつけてきたツケが回ってきたようだ。

 民主化には「軍備より経済」は今や世界の常識。ベトナム戦争後、米軍が撤退した東南アジアは、タイがGDP(国内総生産)74倍、インドネシアは同じく107倍になった。米軍の中東20年間は虚しき幕引きだった。中国と対立を強める台湾は「米国は結局同盟国を見捨てるのか!」と懐疑的になり、中国はせせら笑っている。世界の警察&ト国の信用力は大きく失墜した。

どう出る次の秩序

 米のアフガン撤退を喜ぶのは東隣のパキスタン。彼らの最大の敵はインドで、そのインドの最大の敵は中国だ。急激に存在感を増す中国への反発はアフガンとパキスタンでも大きいが、中国は「一帯一路」の経済発展をチラつかせながら両国を下支えする。

 一方でEU各国はアフガン難民受け入れに消極的。先のシリア難民で懲りており、アフガンの西隣は宗派の異なるシーア派大国のイランと混乱続くイラク。積年のクルド人問題は、トルコ・イラク・イラン・アフガンに旧ソ連までまたがり今も続いている。

 こうした情勢下に、日本はどう立ち回るべきだろうか? 石油の海上交通路確保は依然として中東の優先順位が高い。外交上のウエートは日米関係を基軸にアジアではインドやタイなどが深く長い。パワーバランスの変化を素早く見極め、従来型の継続一辺倒に固執しない柔軟さと「言うべき事はキチンと言う」という弱腰でない強い覚悟が必要だ。

■アフガニスタンを巡る主な経過
1996. 9 タリバンがカブールを制圧し政権発足を宣言
2001. 9 国際テロ組織アルカイダによる米中枢同時テロ
10 タリバンがアルカイダのビンラディン容疑者引き渡し拒否。米英軍がテロ報復でアフガン空爆開始
12 タリバン政権崩壊
2004.1 タリバン政権崩壊後初の大統領選。カルザイ氏が当選
2011. 5 米、テロ首謀のビンラディン容疑者殺害を公表
2014. 9 ガニ大統領就任
2015. 1 アフガン軍が治安の全権を担う
2018. 7 トランプ米政権が米軍撤収を巡りタリバンと協議開始
2020. 2 米とタリバンが21年5月までの撤収を柱とする和平合意を締結
9 和平合意に基づきアフガン政府とタリバンが協議開始
2021. 4 米、駐留米軍が撤退開始を表明
8 タリバンが首都カブールを制圧し、勝利宣言

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