週刊大阪日日新聞

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2021/7/10

普通の人が、なぜ豹変? 後を絶たないストーカー犯罪

現代社会のストレスが生む「自己愛傾向」と「承認欲求」

 JR天満駅近くのカラオケパブを経営していた25歳の女性が殺害される事件が6月に発生した。程なく逮捕されたのは56歳のしつこい¥連客だった。事件はまだ、男の犯行と断定されたわけではないが、ストーカーが暴走し、凶行に及んだとみられている。それにしても「ストーカー犯罪」が後を絶たない。一方的につきまとわれ、理由も解らず「どうして」と戸惑う被害者の恐怖心は極めて大きい。被害を避けるための方法などを犯罪心理学者らに聞いた。

「ストーカー行為が減ることはない」(犯罪心理学者)


犯罪心理に詳しい坂野剛崇教授

 現場は女性が経営するパブの店内。女性は胸や首など十数カ所を刺され、血まみれで床にあおむけに倒れていた。店は飲食店が雑然と立ち並ぶ、JR駅前からバス通りに抜けたところの雑居ビルにあり、事件後、ビルの入り口付近には多数の花束が手向けられ、手を合わせる女性の姿も見られた。

 「怖かった」─。以前、すぐ近くの店で働いていたアラサー女性は、事件の一報を聞き、震えた。彼女も当時、客にストーカーされそうになったことがある。ある夜、ちょっと目を離したすきに、カウンターに置いていた携帯電話を盗まれた。「返して」と頼んでも「知らん。とってない」と否定するばかり。犯行を確信した男性マネージャーが「ポケットのものを全部、出してくれ」と言っても応じない。「それなら警察に行こう」と強く出て、やっと返した。気づくのが遅ければ、個人情報がぎっしり詰まった携帯電話を種に=u何をされたか分からない」と振り返る。

 女性は被害者について「近所付き合いも良く、いい人≠ニ、みんなから好かれていた」と証言する。愛想がよく、別の店に勤めていた頃から「人気があった」との常連客の証言も報じられている。

 被害者は念願だった自分の店を今年1月にオープンさせたばかりだった。新型コロナウイルスによる緊急事態宣言などで、客足が遠のく状況下にあり、この店も営業時間の短縮を強いられていた。被害者は以前、容疑者のしつこさに悩んだ末に「あなたのことが苦手です。もう店に来ないでほしい」と伝えていたが、来店は続いていた。ストーカーに対する「接客業」としての対応の難しさを感じさせられる。


▲事件後、ビルの入り口付近には多くの花束が手向けられている

 2019年のストーカーに関する警察への相談は2万912件と、7年連続で2万件超。弁護士など他の相談窓口を利用した数を含まずだ。加害者は元を含め、交際相手が4割を占めるが、「普通の人が自覚せずに豹変するケースがかなりある」ので「だれでもストーカーになると思っていた方がよい」と極論≠唱える専門家もいる。

 犯罪心理に関する著書が多い、大阪経済大人間科学科の坂野剛崇教授は「接客業はある意味、夢というか、客に誤解を生じさせることで成り立っている面がある。しかし、接客する側がある種のお約束≠ニ認識していても、ストーカー気質の人は、そのあたりの区別がつかず、むしろ自分に都合よくとらえる。認識の歪みの問題だから、なかなか防ぎようがないのが、正直なところだろう」と、サービス業であるための難しさを認める。

 そのうえで、「営業上とプライベートの付き合いがあいまいにならないよう、客との接点は店のみにする。しかも2人きりにならないように留意。個人的な情報の交換は特別感≠抱かせ、不本意な誤解を生じさせる。楽しいひと時を過ごしてもらった後、退店時に は夢から覚め、仕事や家庭など日常生活に戻る意識を持ってもらええるように送り出す対応が必要」と提言する。

 接客業の場合、商売への悪影響が心配で、強い対応をとるのには躊躇するかもしれない。対応の仕方によっては、怒りを招く心配もある。坂野教授は「今回の事件もそうだが、ストーカーは他の客から見ても尋常ではない接し方であることは自明。強い対応をしても、他の客にはきちんと理解される。身を守ることを第一に考えた対応をとってほしい」と訴える。

 ストーカー行為の内容によって対応が異なってくるところもあるが、「ドアを開けるときは周囲に注意」「個人情報が記載されているものを除いて、ゴミを捨てる」「電話番号やメールアドレスといった個人情報の管理に注意」などといった数々の一般的な防犯対策をきちんと行うこと。

 なかでも重要なのが「相手と2人きりになる状況を可能な限り回避する」「すぐに助けを求められる準備をしておく」の2点だと坂野さんは指摘する。

 準備には「警察への相談に備えて証拠となるものを残しておく」ことも含まれるという。

 ところで「桶川ストーカー殺人事件」をきっかけに1999年に制定された「ストーカー規制法」は今年5月に3回目の改正が成立し、6月15日に一部(行動先での見張り行為の禁止)が施行された。従来は自宅や勤務先に限られていた規制範囲が利用駅やホテルなどにも拡大されたが、その改正法の全国初の適用で6月30日に逮捕されたのが、大阪・福島に住む55歳の男だった。

 「ストレスの大きい現代は、自己肯定感が低くなりがちで、それを補償するために自己愛傾向が強まる人が少なくない。また強い承認欲求を持つようにもなりがちなのも特徴だ。ストーカー的な恋愛はまさに、この欲求を満たすものであり、現代人の心性を考えると、ストーカー行為は増えることはあっても、減ることはない」と、坂野さんはみている。

 またストーカー規制法に詳しい四條北斗・大経大ビジネス法学科准教授は「ストーカー行為者は社会の発達に伴い新しい方法が出来てくることで、法規制の対象とならないような新しい手段をとることが少なくない」と、規制法がストーカーといたちごっこ≠ノなっている現実を分析する。

 なお規制法は8月にも「GPS機器などの悪用」を規制する改正が施行される。

 四條さんは「些細な心配事であっても警察や相談所などに相談し、問題意識を共用することが大切」とアドバイスしており、坂野さんも「警察に相談して、警告や接近禁止など、相応の対応を速やかにとってもらえるようにしておくことが大切である」をストーカー被害への対応としている。

過去の主なストーカー事件と規制法の変遷

1999.10 桶川ストーカー殺人

埼玉県桶川市で、女子大学生(21)が元交際相手の男のグループから嫌がらせを受け続けた末、路上で刺殺された。警察が被害者と家族からの相談をずさんに扱っていたことも問題となった。

2000.11 ストーカー規制法が施行
2009.08 耳かき店員殺害

東京都港区西新橋の自宅で、女性(21)と祖母(78)が男に刺殺される。男は女性が勤めていた「耳かき店」の常連で、店外で会うことを要求し出入り禁止となり、その後ストーカー行為をするようになっていた。

2011.12 長崎ストーカー殺人

長崎県西海市にある元交際相手の女性(23)の実家に男が押し入り、女性の母(56)と祖母(77)を殺害。警察は男に「二度と近づかない」など誓約書を書かせていたが、ストーカー被害が続いていた。

2012.11 逗子(ずし)ストーカー殺人

元交際相手の男による大量の嫌がらせメールによる脅迫の末、神奈川県逗子市の自宅でフリーデザイナーの女性(33)が刺殺される。男は直後に自殺した。市役所による個人情報漏洩もあり、住所が特定された。

2013.07 改正ストーカー規制法で電子メールを執拗に送る行為も対象に
2013.10 三鷹ストーカー殺人

東京都三鷹市の女子高生(18)が、自宅に侵入し待ち伏せていた元交際相手の男に刺殺される。交際中に男が撮影していた女子生徒の性的な画像や動画をインターネットに投稿した「リベンジポルノ」も問題になった。

2016.05 小金井ストーカー殺人未遂

東京都小金井市のライブハウス入り口で、出演予定だった女子大学生(20)の歌手が、ファンの男に刺されて重傷を負った。男は女子大学生のSNSに、執拗な書き込みを繰り返しており、警察にも相談していたが、SNSの書き込みは改正ストーカー規制法の「連続した電子メール」と解釈されなかった。

2017.01 改正ストーカー規制法でSNSの連続した書き込みも規制対象に
2020.08 人気洋菓子店パティシエ殺害

東京・中野区の自宅で女性洋菓子店店長(38)が殺害された。事件直後に元交際相手の男が自殺した。女性店長は男からの暴力やストーカー行為に悩み、相談を受けていた警察は再々男に警告していたが、女性の申し出を受け、4月に対応を終えていた。

2021.6-8  改正ストーカー規制法でGPSでの位置情報取得などを規制

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